なぜ「35歳」だったのか

35歳でアメリカの大学院に留学し、もう若くない心身にはややハードな日々を送りながら、ふと、この経験はいつか誰かの役に立つことがあるかもしれないという考えが浮かんだ。そしてその考えは、いつしかハードな日々を乗り切る心の支えにすらなっていた。と…

未来の選択

たとえばこの2年で、どんな選択を経てきただろうか。 仕事を辞めて学生になる、仕事を続ける。 千葉へ引越す、東京に残る。 進学する大学院。 渡米の時期。 アメリカでのアパート探し。 中古の車、家具。 ペーパーのトピック、卒論のテーマ。 グループワー…

標準機能

そして、残り2ヵ月と少しになった。 出来たことはメモ用紙一枚分くらい、 ダメだったことは畳一枚分くらい。 それでも、出来たことがあるなら それを大事にすればいいかと納得しかけた矢先、 2枚目の畳が持ち出されることとなった。 後半に入り、まともに…

根の深さ

発言をする、ということが苦手であると 明確に意識したのは、大学3年のゼミのときである。 確か、一年間のゼミで自ら発言したことは 一度もなかったように記憶している。 政治の枠組みも、経済の仕組みもまともに知らず、 まして、そこに自分の考えを持つこ…

壁の高さ

去年の春頃、 900ワード程度の英文エッセイを書くことや、 英語で面接をすることは、 途方もなく大変なことだった。 そんな状態だったから、 その年の暮れには海外の大学院に出願するなんて 半分は冗談のような気分だった。 しかし終わってしまえば、 900ワ…

Fall Break

スロー・スターターにとっては、 逆境のような1ヶ月半が過ぎた。 たしかに、1年足らずで何かを身につけようと思えば、 のんびりしている場合ではなく、とにかく走って、とりあえず走って、 一歩分でも遠いところでゴールを切る姿勢が必要なのだろう。 自分…

進路面談

『この人を、一体どうすればいいのか?』 ずらりと並んだ5名の一流社会学研究者が議論を交わす光景に、 時折り、思わず他人事のように見入ってしまう。 それを前に発言は、2カ月前から、いや10年以上前から相も変わらず 「社会問題を資本主義のメカニズ…

逆再生

いつからだろうか、 自分が考えたこと感じたことより それがどう見られるか受け取られるかを 優先してしまうようになったのは。 最初は、自分を守る手段だと思っていた。 考えたこと感じたことを無防備にさらして それを否定され軽蔑されたときに 自分の存在…

進路をとれ

IDEAS初日のオリエンテーション修了後、 先生やスタッフの方が懇親会を開いてくださった。 知的探求を生業とする研究者と、 何がしかになろうと意欲を抱える研修生。 他愛もない世間話などほとんどなく、 話題は自然と私たちの問題意識の対象や 今後の…

ひとりラン

走りなれたはずの皇居周回コースを ひとり、じっくりと走ってみる。 自分と外界を隔てる、一枚の皮 その内部と対話する時間 その外部を感受する時間 その二つが融合し、無になる時間 たった30分足らずの、濃縮された時間。 2年間、向き合い続けたこの時間が…

変化の質

これまでの転職には、ほとんど何の不安もなかった。 それまでの場所に居続けるよりも、次の場所に移った方が 総じて状況が改善するという、確信のようなものがあったから。 もちろん、リセットボタンを押してまたスタートを切るような 真新しい気持ちになれ…

楽観の勝利

誰に頼まれたわけでもなく、自分で決めたことなのに 締切りが近づくにつれて日増しに気が重くなるという 本末転倒ぶり。 1月の寒い部屋でパソコンに向かいながら 「完成」に近付いているのかも、そもそも何が「完成」なのかも さっぱり分からなくなってくる…

桜ラン

1周目の5キロは、止まらず走り続けることで精一杯だった。あの坂を登り、あの角を曲がり、 やがてチリは積もって100周目。満開の桜が祝福してくれた。

トレイルラン

都会の喧騒を抜け、大磯に着くと まばゆい日差しに迎えられる。 平坦な道を3キロほど走り、その麓に立つ。 あっという間に息が切れるほどの 急な斜面をくねくねと登り続けると いつの間にか、濃い自然の中にいた。 湘南平で、初めてのトレイル・ラン。 走る…

体育の日ラン

近頃は異常気象が叫ばれていて ゲリラ豪雨が頻発したり 桜の季節に雪が降ったりしているけど 体育の日だけはなんだか聖域のように 相変わらずよく晴れる。 文化の日も、建国記念日も 特別なにをするわけでもないくせに 体育の日だけは、運動をするのが 「正…

書禅

年の始まりには目標を立てる。 形に残るものも、残らないものもある。 自分の力ではどうにもならないものも やる気さえあれば今日にだってできるものもある。 そしてたいていは、いくつかは未達成で終わる。 それは、去年の一番の目標だった。 やる気さえあ…

被災地を語る

「ボランティア、どうだった?」そう聞かれて 「良かった。楽しかった。」と 半ば条件反射的に出てくる言葉を呑みこむ。 これはゴルフコンペとは違うのだと。少なくとも、 自分がそういうイメージの発信源になっては いけないのだと。 予想以上に、そう質問…

被災地を行く

田舎ののどかな風景に、突如として 壊れた民家や潰れた車が出現する。 やがて、瓦礫が散乱した土地に変わる。 宮城県の南三陸を走るバスの外には、 すでに映像で見慣れてしまった光景が広がっている。 ボランティアは、その日の状況に応じて人が配置が決まる…

被災地を想う

会社主催の第1回被災地ボランティア、 そのオリエンテーションに参加した。 被災地の子供支援を行なっているNPOと協働して、 その活動を共にしたり、休日のイベントを開催するプログラム。 NPOは、被災した子供たちの学習の遅れを取り戻す手伝いや、 …

断捨離

「断捨離」の提唱者の取材番組。 次から次に出てきては消えていく ハウツーものの一つに過ぎないと思い、 さしたる期待もなく見ていたのだが、予想に反して その考え方に次第に引き込まれてしまった。 一、主役はモノではなく、自分 「自分にとって必要ない…

10Years

社会人になって最初の日、 期待とのあまりの格差の大きさに、泣きながら帰宅した。 その日から、ちょうど10年が過ぎた。 少しずつ現実に慣れながらも どこかで、理想の場所を、それに近い場所を、探していた。 “理想”の具体的なイメージも持たないまま。 2…

大地震の後

1995年の阪神・淡路大震災。 連日のテレビ報道が、震災被害の悲惨な状況と そこから立ち上がろうとする人々の姿を伝える中で、 おそらく自身も被災者であろう何人かが、避難地域に 自力でシャワールームを設置している光景を目にして、 途方もない無力感を覚…

15kmラン

わずかに春めいてきた朝、 生まれて初めての15kmランに挑戦した。 皇居1周目、すぐに少しお腹が痛んだ。 でも、わずかな不調なら1周は走り切れるようになっている。 皇居2周目、足の裏が痛くなった。 着地するたびに土踏まずが擦れて、不安がよぎり始め…

精神労働

前回の冬のある日、 ランニング中に足を痛めた。 しばらく放っておいたが治らず、 自宅の近くにある整骨院を尋ねた。 その小さな空間には、3〜4人の先生が 1階と2階を忙しく行き来しながら、 その間にある待合室の患者にも気を配る、 その親切で温かい空…

忘年ラン

今年の夏から定期的に走り始めた皇居。 最初は、月に1度くらいのペースが、 次第に、週に1度になった。 熱気と湿気がまとわりつく夏も、 暑さと涼しさが交差する秋も、 空気がしんと張り詰める冬も、 そんな季節の移り変わりを、 同じ日は二つとない自然の奥…

クリスマス朝ラン

午前の皇居は、普段と少し違う顔をしている。 ランナーがまばらの、広々としたコースに、 大型の車が行き交う、慌ただしい車道。 そして空は青々と澄み、さわやかな光は、 いつもとは別の角度で差している。 まだぼんやりと眠たかった身体も、 きりりと引き…

月曜ラン

新しい週のはじまり。 仕事が終わるやいなや、アディダス・ランベースへ直行。 ランベースのカウンターでは、 メンバーズカードを出すと、毎回スタンプを押してくれる。 なんだか、夏休みのラジオ体操みたいだ。 スタンプが増えていく喜びが、ランニングが継…

大学のある風景

まるで小春日和のような、暖かく穏やかな週末。 久しぶりのランニングに出掛ける。 風邪気味で、この一週間は走ることを中断していた。 そのフラストレーションは、思いのほか大きかった。 身体には不快感が蓄積していくし、食べる楽しさは半減するし。 そし…

優雅なる休日

ドシャ降りの雨で始まった一日。 朝10時、五反田の薬師寺別院にて写経。 数十年ぶりに墨を擦る。 子供の頃、あれほど煩わしかった作業が、 とても新鮮で神聖なことに思える。 薬草を舌に乗せて深呼吸し、身体の内側を清める。 本堂に焚かれたお香を跨ぎ、身…

最後の勉強

ATMの前でしばらく躊躇し、 一度その場を離れて数分後、 気持ちを固め、128,000円を送金。 毎週「日曜の夜」というすばらしい時間に開かれる 2ヶ月間の、スパルタTOEFL対策講座に入会。 これが最善の選択なのか分からないけれど、 やりながら、進みながら…