楽観の勝利

誰に頼まれたわけでもなく、自分で決めたことなのに
締切りが近づくにつれて日増しに気が重くなるという
本末転倒ぶり。



1月の寒い部屋でパソコンに向かいながら
「完成」に近付いているのかも、そもそも何が「完成」なのかも
さっぱり分からなくなってくる、たとえば試験勉強とはまったく性質の違う厄介さに
ほとほと手を焼いていた。



「ギリギリまで」というより「ギリギリだけ」頑張って、夜遅くにポストに投函した。
この名もなき挑戦は、どうせまた誰も知らない場所で、そっと息をひそめるのだろう。
それでも、「挑戦しなかった」という後悔を後に残さないだけ良かったとしよう。
そんな気持ちとともに。






みずほ学術振興財団 懸賞論文 経済 社会人の部 2等 入選



どこかで期待は持っていた。
しかしそれは、自分の中の異様なほどに楽観的な側面が
根拠なくいつも勝手に抱いてしまう、コントロール不能な単なる期待だった。
その後ろ盾のない期待は、これまで何度となく当然のごとく破れてきているのに、
「そんなことはお構いなし」とでも言わんばかりに、いつもめげずに顔を出してくる。



理性は、半ば呆れた顔でそれを見る。自信なんて、まったくなかった。



でも今回ばかりは、能天気な期待が勝利を収めたようだ。
「そんなこともあるんだなあ」というのが、いまの正直な感覚。