壁の高さ

去年の春頃、
900ワード程度の英文エッセイを書くことや、
英語で面接をすることは、
途方もなく大変なことだった。



そんな状態だったから、
その年の暮れには海外の大学院に出願するなんて
半分は冗談のような気分だった。



しかし終わってしまえば、
900ワードの英文エッセイも、
英語での面接も、大学院の出願も、
すべて大したことではなくなっている。



そしていま、目の前には、
背後の障害物よりも遥かに頑丈で、
見上げるほど高い障壁が、
整然と列を成している。



去年の春頃の状況にして、
今ここにいることは、やはり無謀だったのではと
その壁を見上げて、途方にくれる。



そんな状態だから、
ここから1年足らずで
英語の修士論文を書き上げ、新しい仕事を得るなんて
半分は冗談のような気分だ。



超えられるはずもなかった壁が、気づいたら背後にある。
それはまた今回もと希望に似た気持ちもあるけれど、
いつだってそれは、壁のこちら側からは
想像さえできない感覚である。