変化の質

これまでの転職には、ほとんど何の不安もなかった。
それまでの場所に居続けるよりも、次の場所に移った方が
総じて状況が改善するという、確信のようなものがあったから。
もちろん、リセットボタンを押してまたスタートを切るような
真新しい気持ちになれることへの期待もあった。




でも、それを2回経験して気付いたのは、
このやり方が“相対的な”解決策でしかないということ。
スタート地点に引かれた線と走りだした方向に、1ミリの狂いもないのなら、
この方法もやがては素晴らしい結末を迎えるかもしれない。
でも、いつしか周りに広がる景色に覚えはじめた違和感にフタをして
いくら“相対的な”改善を繰り返しても、自分が真新しくなったという
瞬間的な幻想が過ぎ去れば、大きく変わらない景色を走っていることに気付く。




だから、3度目の場所では、この“相対的な”やり方に解を見出すことは
やめようと思っていた。「やってもしょうがない」という消極的な意味だけではなく、
“相対的な”改善を繰り返し、かなり恵まれた環境にあるという自覚もあったから。
ただ、拭いきれない違和感は、遠くの親戚の子どものように、しばらく見ない間に
すくすくと成長し、遠くから聞こえる叫び声がかすれていくことに、心がざわついた。




今回、新しい扉の向こうにどのような景色が見えるのか、
違和感はその量と質をどのように変えていくのか、まったく分からない。
分からないから、いままでは無かった大きな不安も感じている。
でもそれも、これまで繰り返してきた比較可能な“相対的な”状況の改善ではなく
別次元での変化が起ころうとしているからだと、同じだけ大きな期待で受け止めたい。