大学のある風景

まるで小春日和のような、暖かく穏やかな週末。
久しぶりのランニングに出掛ける。



風邪気味で、この一週間は走ることを中断していた。
そのフラストレーションは、思いのほか大きかった。
身体には不快感が蓄積していくし、食べる楽しさは半減するし。



そしてこの外出には、もう一つの目的があった。
自宅から徒歩5分ほどの、ある私立大学の最上階にあって
一般開放されているらしい、ラウンジの視察。




社会人になると、外で勉強できる場所を確保することは難しくなる。
近所のカフェやファーストフードを使ってみたことはあるけれど、
騒々しかったり、汚かったり、テーブルの高さが合わなかったりした。
図書館も、古くて、いろんな人が集まっていて、混んでいて、
正直なところ、長時間を過ごせるような場所ではなかった。




この大学の校舎は、数年前に建てられたばかりの近代的な建物。
エレベーターで10階に上がると、なんとも開放的な空間が。
全面ガラス張りの窓からは、270度くらいの東京が見渡せた。



期待以上の場所であることに満足し、本題のランニングに戻る。



大学に沿って走る緑道を東へ。
三軒茶屋を折り返し地点に、わずか20分少しの距離だったけれど、
暖かな日差しの中、身体が目覚める感覚を味わった。




シャワーを浴び、勉強道具を持ち、
あらためて、先ほど見つけた場所へ向かう。




すでに食堂サービスの時間は終わり、
夕陽に包まれたそこは、無人の空間になっていた。
少しためらいながらも、景色のよい窓際の席に座り、
本を広げる。




東京は狭いというのは嘘ではないけれど、
こんな場所が、誰にも利用されずにここにあることが、
なんだかとても、勿体ないことのような気がしてくる。
いや、そんな非効率があるからこそ、私はこの贅沢を享受できるのだけれど。
しかも、「私立大学」だから、図書館や公民館のような公共施設でもなく
こんなふうに勝手に利用しては、本当はいけないのかもしれないけれど。




しばらくすると、フロアの中心部分で、夜の宴会準備が慌ただしく始まったが
私の存在を気にする様子もない。




大学、という施設。
いつでも、自由に勉強できる場所があるという環境。
それが当たり前に存在している間は、その貴重さに、なかなか気付かない。


近くに大学があること。
これを、住む場所の条件のひとつに、こっそり加えてもいいかもしれない。
まあ、自宅に書斎を持てれば、それに越したことはないのだけれど。