優雅なる休日

ドシャ降りの雨で始まった一日。



朝10時、五反田の薬師寺別院にて写経。
数十年ぶりに墨を擦る。
子供の頃、あれほど煩わしかった作業が、
とても新鮮で神聖なことに思える。



薬草を舌に乗せて深呼吸し、身体の内側を清める。
本堂に焚かれたお香を跨ぎ、身体の外側を清める。
そして、般若心経を、一文字一文字書いていく。
書き終わったものは、奈良の薬師寺に、
薬師寺が続く限り」保存していただけるらしい。
和紙は、千年もつのだそうだ。



すっかり清められて外に出れば、空もまた清々しい青。
東五反田の高級住宅街を抜けて、白金台へ。
お昼は、念願だった「利庵」のお蕎麦。



出汁たっぷりの、ほわほわと甘くて温かい「出汁巻き卵」に感動し、
白っぽくて細くて、しっかりと腰のあるお蕎麦に舌鼓を打つ。
東京に生まれてよかった、と思う瞬間。江戸っ子ではないけどね。



紅葉もピークと思われるこの日、
黄金に輝くイチョウ、真っ赤に燃えるモミジに彩られた
庭園美術館の庭園を、のんびりと散歩する。
12月とは思えない、ポカポカと暖かい昼下がり。
この庭で、本なんか読んだら気持ちよさそうだな。
たとえば、『走るときについて語るときに僕の語ること』(村上春樹
なんかを。



そして、永田町へ移動。
すっかり常連になった『adidasランベース』を拠点に、皇居ラン。
じりじりと肌を焼くほど、西日が強かった。
こんな日に、外を走れる幸せ。



さらに汗をかくために、麻布十番で溶岩浴。



食事の前に、軽くお酒を。
麻布十番の交差点沿いに建つ、パリを思わせるビストロに立ち寄る。
ゆっくりとビールを飲みながら、暮れゆく時間を味わうこの時間が、
いつからか、とても好きになった。



そしてたっぷりと夜が更けた頃、本日最後の食事。
麻布十番の『ビストラン エレネクス』のカウンター。



ひとつひとつ、手の込んだ前菜。
里芋のようなお芋がゴロゴロと練りこまれたテリーヌ。
冬を感じさせるカキのリゾットと、温められたお皿。
厚くてやわらかい子羊のグリルに、甘くて濃厚なソース。
ブリオッシュに乗ったシナモンのアイス、イチジクのコンポート。



不思議と、一皿ごとに美味しさが増してゆく。
心地よい雰囲気と、雰囲気だけではない実力。
きっと、また来たくなってしまうだろうな。
夜更けに、何か美味しいものが食べたくなったら。