金融知力

日本は金融教育が遅れている、と言われる。



戦後復興の過程で構築された銀行中心の金融システムを引きずり
自らのリスクを取って投資するという習慣も術も身についていない
しかしこれからは、自分の資産は自分の責任において形成しなければならない・・・
というのが、およそこの文脈において指摘されることだ。



もちろんそれは、一理ある。
「お上に任せておけば間違いない」という精神が
金融のみならず、政治や社会のあらゆる問題を
深刻にさせ、放置させ、解決を困難にしている面は
おそらくあるだろう。



しかしここで、
金融業界に身を置く者として、違和感を抱く。
どのようなリスクをとると
どれだけのリターンが期待できるのか。
どうすればリスクを抑え
効率よくリターンを獲得できるのか。
それは確かに金融知力であるかもしれないけれど
それは確かに物事の「片面」に過ぎない、と思う。



つまり
この投資が、自分にとってどのような経済的効果をもたらすのか?
と同時に
この投資が、自分が属する社会にどのような影響を与えるのか?
という視点が、「もう片面」にあるべきだ。



金融機関は、
金融商品の仕組みやら
リスクの種類やら、期待リターンの高さやらを
わかりやすく伝えるべく、日々努力を重ねている。



でも
自分の資金がどれだけ効率よく増やせるか?
それだけを目的にお金が世界を駆け巡るとしたら
資本経済はいつまでも
人を豊かに、幸せには、できないと思う。